強迫観念が頭から離れない!強迫性障害とは?

日常生活に支障を来す10大疾患の1つに数えられる、「強迫性障害」。現在50~100人に1人が罹患すると言われており、この中にはうつ病など他の精神疾患を併発しているケースも少なくありません。

強迫性障害の主な症状は「強迫観念」と「脅迫行為」の2つで、「強迫観念」とは自分が作り出してしまった考えやイメージが頭から離れない症状、「脅迫行為」とはその考えやイメージのせいで湧き上がる不安や恐怖、嫌悪感を打ち消すために特定の行動をとるという症状のことを指しており、今回はこの強迫性障害の原因や症状について記事を書いていきたいと思います。

強迫性障害とは?

例えば汚れや細菌感染への恐怖心から過剰に手を洗ったり何度も入浴したりする「不潔恐怖と洗浄」、誰かに危害を加えてしまったかもしれないという考えにとらわれ、事件や事故がなかったか新聞やテレビを何度も確認したり警察に問い合わせたりする「加害恐怖」、また戸締りや電気器具・ガス栓をきちんと閉めたかどうかを何回も確認したりじっと見はったりする「確認行為」などがあり、本人も頭のどこかで「そんなはずはない」「バカバカしい」と思いながらもその強迫観念に逆らえず、これらの脅迫行為を日に何度も何度も繰り返してしまうのです。

かつてこの強迫性障害は不安障害の1つと見なされていましたが、その症状からすると不安や恐怖よりも嫌悪感や道徳心が関係していることが多いため、現在では不安障害とは別個の障害として扱われるようになりました。

強迫性障害の原因

強迫性障害の器質的な原因として、脳内の神経伝達物質であるセロトニンの異常や前頭葉の血流異常により、汚れや安全に関する認識に障害が出ている可能性が指摘されていますが、今のところ憶測の域を出ておらずハッキリとしたことは分かっていません。また強迫性障害の罹患経験のある親を持つ子供が発症するケースも多いことから遺伝的な要因も指摘されていますが、全ての子供が罹患するわけではないため、遺伝的要因を抱えた人が発症しやすい環境に置かれた場合に、強迫性障害になってしまうのだと考えられています。

ここでいう「発症しやすい環境」とは、特定の性格を持つ人が特定のシーンに遭遇するようなケース。例えば責任感が強くまじめな人や完璧主義の人、ネガティブ思考になりやすい人が、生活上の変化があった際に物事がうまくいかなかった場合に、強迫性障害へと発展してしまうことがあります。またストレスの蓄積により軽度の強迫性障害を発症し、何度も繰り返すうちに症状が悪化していくというケースも珍しくありません。

まとめ

今回は脳内の神経伝達物質が異常を来したり、遺伝的要因からも起こる強迫性障害について記事を書いてまいりました。文中にもあるようにうつ病よりは名前を知られていないかもしれませんが、日本でも大変多くの方が羅患している病気の一つです。

またこちらも文中にありますが、うつ病や強迫性障害を引き起こす方の多くは真面目で責任感が強い傾向を持っています。例えばそれでもいままで問題なく生きてこれたから、、という思いがあってもどんなことが引き金になって起こるかは誰にもわかりません。

その際、いままで長く習慣にしてきた仕事の仕方や家事の方法というのはなかなか改めることが出来ず、仕事や家事をこなすことが出来ない自分にまた腹が立ち、悪循環に陥ることが多々あります。つまり病気が発症してからでは後手後手になってしまいますから、普段から自分を許し、他人が許容してくれる範囲というものを理解するようにしましょう。

また下記には日本精神神経学会がまとめている強迫性障害について抜粋してみましたので、補足としてご一読いただければと思います。

強迫症では、本人のみならず、家族など周囲の人にも著しい影響が及びます。特に深刻なのは、巻き込み症状です。これは、例えば手洗いや確認などがちゃんとやれたかが心配で、大丈夫という保証を家族に繰り返し求める「保証の要求」や、ある儀式的行為(寝る前の鍵の確認など)を、大抵は本人の監視下で家族に強いる「強迫行為の代行」、そして自らが作ったルール(帰宅した際の手洗いや入浴など一連の洗浄行為など)を家族にも従うよう強制する「ルールの強要」などがあります。通常、巻き込み症状は、経過と伴に生活全般に拡大し、ルールはより厳密化していきます。

これも強迫行為と同様で、より完璧を求めて切りがなくなり、家族はいずれ応えきれなくなります。例えば、患者さんから「大丈夫か」と繰り返し尋ねられる「保証の要求」は、返答を繰り返す中で却って要求がエスカレートし(もっと真剣に言えなど)、納得して終えることが難しくなります。すると患者さんの不安やイライラは高まりますし、一方家族には、長時間拘束されて疲労困憊するなど、心身に大きな負担がかかります。この場合、まず本人は、他者を巻き込みコントロールしようとすることが、結局は自分の思うようにならず、不安焦燥を招く不安定要因となりうるものと知る必要があります。

引用:日本精神神経学会